完工後の残金が8ヶ月回収できない──横浜のリフォーム会社がマイルストーン支払いで回収期間を45日から7日に

InvoiceFlow 編集部 · 2026年6月1日 · 読了目安15分

横浜市・港北区。新横浜にほど近いこの街で、伊藤建一さん(52歳)は従業員5名のリフォーム会社を経営している。一般家庭の水回り・内装リフォームから、飲食店や美容室の店舗改装まで、工事の規模は200万円から1000万円と幅広い。職人としての腕は折り紙付きで、地域での評判も上々。施工の質に関しては、何の不満もなかった。

問題は、いつもお金の「最後」にあった。

「着手金30%+完工70%」という時限爆弾

伊藤さんの会社が長年採用してきた支払い条件は、業界でよくある「着手金30%+完工70%」だった。工事の契約時に代金の30%を着手金として受け取り、残りの70%は工事完了後に支払ってもらう、というものだ。

一見シンプルで合理的に見えるこの条件が、伊藤さんの会社の資金繰りを何度も危機に陥れた。問題は、代金の70%という大部分が「完工後」に集中している点だった。

工事が完了し、お客様に引き渡したあと──ここで残金の支払いが滞るケースが後を絶たなかった。

「工事の質には自信がある。なのに、最後のお金のところでいつも苦労する。完工後に大きな残金が残っている限り、僕らはずっと弱い立場なんだと痛感しました」

建設業の請負代金と、瑕疵担保責任

リフォームは、法律上「請負契約」にあたる。請負人(リフォーム会社)は仕事を完成させる義務を負い、注文者(お客様)は完成した仕事に対して請負代金を支払う義務を負う。

ここで重要なのが、引き渡した工事に欠陥(瑕疵)があった場合の契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)だ。リフォーム会社は、引き渡し後も一定期間、欠陥を修補する責任を負う。これ自体は当然の責任だが、問題は、この「修補責任」を盾に、お客様が残金の支払いを不当に引き延ばすケースがあることだ。

「もちろん、本当に欠陥があれば直すのが当然です。でも、明らかに言いがかりに近いクレームで、何百万円もの残金を人質に取られると、こちらは打つ手がない。完工後に残金が大きく残る構造そのものが、トラブルの温床だったんです」

伊藤さんに必要だったのは、支払いを工事の進捗に合わせて細かく分散させ、「完工後に残る金額」を最小化する仕組みだった。

マイルストーン支払いという発想の転換

転機は、同業の経営者仲間から聞いた「マイルストーン支払い」という考え方だった。これは工事を複数の節目(マイルストーン)に区切り、各節目の達成ごとに代金の一部を受け取っていく方式だ。建設業界では「出来高払い」とも呼ばれる。

伊藤さんは、請求書アプリ「InvoiceFlow」の分割払い(スプリットペイメント)機能を使って、自社の支払い条件を根本から設計し直した。

マイルストーン割合タイミング内容
着手金30%契約・着工時材料発注・初期費用の確保
中間金40%主要工事完了時解体・造作・設備の山場を越えた時点
隠蔽部分検査20%壁内・床下の検査合格時配管・配線など隠れる部分の確認後
完工金10%引き渡し・最終確認時残金はわずか10%に

この設計の肝は、完工後に残る金額をわずか10%に抑えたことだ。万一、引き渡し後にクレームや支払い渋りがあっても、人質に取られる金額は全体の10%に過ぎない。すでに90%は工事の進捗に応じて回収済みなのだ。

「『隠蔽部分検査』のマイルストーンを入れたのもポイントです。壁や床で隠れてしまう配管・配線の工事は、お客様の目に見えない。だからこそ、隠す前に一緒に確認して、その時点で20%をいただく。お客様にとっても『見えない部分をちゃんと確認できる』という安心材料になり、Win-Winなんです」

電子署名で各マイルストーンの達成に合意

伊藤さんは、各マイルストーンの達成時に、お客様に電子署名で「この工程は完了し、この金額を支払う」という確認をしてもらうようにした。中間金の段階、隠蔽部分検査の段階で署名が残るので、後から「そんな段階で払うとは聞いていない」という水掛け論が起きない。

PDFで請求書・出来高内訳を明示

各マイルストーンの請求書はPDFで発行し、何の工程に対する請求かを明記。お客様は「今、全体のどこまで進んで、いくら払っているのか」を常に把握できる。透明性が高まったことで、お客様の安心感も増した。

自動リマインダーで完工金10%も取りこぼさない

完工金10%についても自動リマインダーを設定。引き渡し後、期日になればシステムが自動でリマインドを送る。「金額が小さいので、お客様も気軽に振り込んでくれる。10%なら、言いがかりで引き延ばすメリットもお客様側にないんです」

支払い手段は銀行振込が中心

高額なリフォーム代金は銀行振込が基本だ。InvoiceFlowの各マイルストーン請求書には振込先と期日を明記し、入金を確認して消し込む。少額の追加工事費などは、お客様の希望でPayPayに対応することもある。

結果:回収期間45日→7日、貸倒れ3%→0.2%

マイルストーン支払いを導入してから1年半。伊藤さんの会社の数字は劇的に改善した。

「数字以上に大きかったのは、職人たちが安心して働けるようになったことです。以前は資金が詰まると給料の支払いが綱渡りで、職人にも不安が伝わっていた。今は工事の進捗に合わせてお金が入るから、経営が落ち着いた。腕のいい職人を引き止められるようになったのも、この仕組みのおかげです」

カスタムテンプレートで出来高内訳を見やすく

伊藤さんはカスタムテンプレートエディタを使い、リフォーム工事に特化した請求書テンプレートを作成した。工程ごとの出来高内訳、写真の添付欄、瑕疵担保(契約不適合責任)の期間明記など、建設業ならではの項目を盛り込んでいる。

複数事業プロフィールで「家庭」と「店舗」を分ける

一般家庭向けと店舗向けでは、求められる書類や条件が異なる。伊藤さんは複数事業プロフィール機能で両者を分け、それぞれに適したマイルストーン設計とテンプレートを用意している。

バックアップで契約・工事データを保全

高額な工事契約のデータは、何年も保管が必要だ。契約不適合責任の期間中にクレームが来た場合、当時の契約内容や署名記録が証拠になる。伊藤さんはInvoiceFlowのバックアップ/復元機能で、これらを確実に保全している。

建設・リフォーム業の経営者へ

最後に、伊藤さんは同業者へこうメッセージを送る。

「リフォーム業の経営難の多くは、技術ではなく『お金の構造』に原因があります。完工後に大きな残金を残す限り、僕らは永遠に弱い立場です。工事を節目で区切り、各節目で回収する。完工後に残すのは最小限にする。これだけで、経営は驚くほど安定します。良い仕事をしている職人ほど、お金の仕組みで損をしてはいけない。腕に見合った回収を、堂々と実現してほしいんです」

横浜・港北区。伊藤建一さんの会社では今、職人たちが安心して現場に向かっている。完工後の残金に怯える日々は、もう過去のものになった。