名古屋の動物病院が、リアルタイム記帳と前受金管理で23万円を取り戻した話

InvoiceFlow編集部 — 2026年5月30日公開 — 読了目安10分

斎藤婷(さいとう・てい)さんは、名古屋・千種区の住宅街で「さいとうペットクリニック」を院長として営む獣医師だ。個人事業として開業して6年。診療だけでなく、トリミングとペットホテルも併設しており、地域のかかりつけ医として親しまれている。動物への愛情は人一倍だが、その分、お金の管理は後回しになりがちだった。

「動物の命に関わる仕事をしていると、正直、請求や記帳は『あとでまとめてやればいい』になってしまうんです」と婷さんは言う。だが、その「あとで」が、年に何十万円もの取りこぼしを生んでいた。

3業務 × 季節変動という難しさ

婷さんのクリニックは、三つの業務を抱えている。そしてそれぞれが、まったく違う季節変動の波を持っていた。

これらの繁忙期が重なると、現場は戦場になる。そして、戦場では取りこぼしが起きる。

問題1:繁忙期の請求混乱

連休前、ペットホテルの予約が殺到し、同時に診療やトリミングも立て込む。スタッフは目の前の動物の対応で精一杯で、「誰が・どのサービスを・いくらで利用したか」の記録が追いつかない。会計が後回しになり、レジ締めの時点で「あれ、この子の診療代、もらったっけ?」が頻発した。

問題2:ペットホテルの前受金管理

ペットホテルは連休に予約が集中するため、無断キャンセルや直前キャンセルが死活問題だった。一頭分のケージを押さえているのに、当日来なければ、その枠は丸ごと空く。婷さんは「予約金(前受金)をいただく」運用にしたかったが、誰がいくら前受金を払っていて、当日の総額からいくら差し引けばいいのかを、手書きの予約ノートで管理しきれなかった。前受金をもらったのに当日また満額請求してしまい、後で返金する、といった混乱も起きた。

問題3:閑散期の未請求診療費

最もタチが悪かったのが、これだ。「お会計、次回でいいですよ」が、未収を生んでいた。長く通ってくれている飼い主さんに、急患対応の後や、財布を忘れた時などに「次でいいですよ」と言う。婷さんの優しさだ。だが、その「次回精算」のメモが繁忙期の混乱に紛れて消え、閑散期に振り返ると請求し忘れている診療費がぽろぽろ出てきた。一件は数千円でも、積もると大きい。

婷さんが一年分を棚卸ししたとき、これらの取りこぼし——繁忙期のもらい忘れ、前受金の二重請求のロス、未請求の診療費——は合計で23万円にのぼった。獣医としての腕とは無関係に、ただ記録が追いつかないだけで失っていたお金だった。

転機:「あとでまとめて、をやめる」

転機は、開業医仲間の歯科医院長の一言だった。「先生、『あとでまとめて記帳』が諸悪の根源だよ。その場で、その瞬間に記録する。スマホでできるから」。

紹介されたのが「InvoiceFlow」だった。スマホで、診察台の横でも受付でも、その場で売上と入金を記録できる。前受金も項目として管理でき、最終請求から自動的に差し引ける。オフラインでも動くので、混み合う受付でもサクサク入力できる。婷さんは運用をがらりと変えた。

仕組み:リアルタイム記帳と前受金管理

1. その場で記帳する

まず、「あとでまとめて」を完全にやめた。診療・トリミング・ホテルのどのサービスでも、提供したその場でスマホに記録する。診察が終わったら診察料をその場で入力、トリミングが終わったらその場で、ホテルのお迎え時にその場で。これだけで「もらったっけ?」の混乱が消えた。記録と現実がずれなくなったのだ。

会計を後回しにしないので、レジ締めも一瞬で終わる。「夜、疲れた頭で伝票の束と格闘する時間が、まるごとなくなりました」。

2. ペットホテルの前受金を見える化

ペットホテルの予約時には、予約金(前受金)をいただく運用に正式に切り替えた。InvoiceFlowで、予約一件ごとに前受金を記録しておく。お迎えの当日、追加でかかった分(延長、おやつ、投薬など)を足して総額を出すと、前受金が自動的に差し引かれ、残額だけを請求できる。二重請求も、返金の手間も消えた。

前受金をもらうようにしたことで、無断キャンセルも激減した。「予約金をお預かりしています」と伝えるだけで、飼い主さんの予約への責任感が変わった。連休のケージの空きロスが減った。

3. 「次回精算」をタスク化

「次回でいいですよ」をやめはしなかった——それは婷さんの大切なホスピタリティだから。代わりに、その場で未収として記録し、次回来院時に精算するタスクとして残すようにした。リマインダーが出るので、次にその子が来たときに「前回のお会計、一緒にお願いしますね」と自然に声をかけられる。優しさを保ったまま、取りこぼしをなくした。

季節変動を「見える化」して経営に活かす

リアルタイムで記録が貯まると、思わぬ副産物があった。三業務それぞれの季節変動が、データとしてはっきり見えるようになったのだ。いつ・どの業務が・どれだけ稼ぐかが分かると、スタッフのシフトや仕入れ、販促のタイミングを先回りで組めるようになった。

たとえば、ペットホテルの予約が埋まり始める時期が読めるので、早めに予約受付の告知を打つ。トリミングの年末需要に向けて、閑散期のうちにキャンペーンを仕込む。「どんぶり勘定だった頃は、繁忙期に振り回されるだけでした。今は、波が来るのが分かるから、構えていられる」。

結果:23万円を回収、確定申告も楽に

運用を変えて一年。婷さんの取りこぼしは、ほぼゼロになった。その場記帳で繁忙期のもらい忘れが消え、前受金管理で二重請求とキャンセルロスが減り、未収のタスク化で診療費の請求漏れがなくなった。一年で取りこぼしていた23万円が、丸ごと手元に残るようになった

個人事業主としての確定申告も、劇的に楽になった。日々その場で記録しているので、年度末に伝票を漁る作業がない。三業務別の売上も整理されているので、経費の按分や税務署への説明もスムーズだ。「税理士さんに『先生、今年は記帳がきれいですね』って言われたとき、ちょっと誇らしかったです」。

何より大きかったのは、本業に集中できるようになったことだという。「お金の取りこぼしを気にしなくてよくなったぶん、目の前の子の治療に集中できる。それが一番の収穫でした。動物たちのための時間が増えたんです」。

同じように季節変動と前受金がある人へ

季節変動が大きく、予約・前受金を扱う事業——動物病院、エステ、宿泊、教室、イベント、季節商材の小売——に共通する教訓はこうだ。

  1. 「あとでまとめて」をやめ、その場で記録する。繁忙期の取りこぼしは、リアルタイム記帳で防げる。
  2. 前受金は見える化し、最終請求から自動で差し引く。二重請求とキャンセルロスを同時に防ぐ。
  3. 「次回精算」は口約束でなくタスクにする。優しさと回収は両立できる。

使ってみる

InvoiceFlowはGoogle Playから無料でダウンロードできる。リアルタイムの売上・入金記録、前受金(予約金)の管理、未収のリマインダー、複数の事業プロフィール(業務別管理)、PDF出力、オフライン動作、バックアップなどがサブスクなしで使える。混み合う受付でもオフラインでサクサク記録できる。

斎藤婷さんは今、二人目の獣医を迎える準備を進めている。「記録が誰にでも分かる形で残るようになったから、人を増やしても引き継げる。優しさは大事だけど、仕組みはもっと大事。6年目にしてやっと、両方を手に入れられました」。